日東醸造 「食」の達人たち 料理人イガリが行く
食のエッセイ 猪狩氏のとっての「食」について、お話をお聞きしました。
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〜第2話 築地の八百屋 川上さんとの対談〜
 今回は、第1話の中に登場した"いい八百屋..."、東京・築地で八百屋(豊吉)を営まれる川上さんと猪狩さんのお二人に、お二人の出会いやお互いに対する思い、季節の野菜、料理についてなど、対談形式でお話いただきました。

出会いは、他店の裏切りから
猪狩 もう、10年になるのかなあ。
川上 そう。僕と猪狩さんが出会ってね。10年前から今日まで、ずっと僕たち毎日楽しく生活してますよね(笑)。僕なんて、猪狩さんの顔、毎日見ないと寂しくてしょうがないんですよ(笑)。
猪狩 おかげさまで、かわいがっていただいてます(笑)。そういえば、うちの店、以前は野菜を仕入れてた八百屋って、何軒もあったんだよなぁ。ちょうど10年前、とある八百屋に注文しておいた野菜を取りに行ったら、平気で"今日は仕入れてないからありません"って、無責任な対応されることや裏切られることが何度も続いて...ある日、僕がプッツンして、それから豊吉さんとの付き合いが始まったんだよね。それでも、その当初は別にもう1軒の八百屋との付き合いがあって、そこは長い付き合いだからって安くしてくれたりもしてたんだけど、そういう問題じゃない。だって、豊吉さんの野菜の方が旨いんだもん。
川上 いやぁ〜、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
 
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野菜選び、それは楽しみのひとつ。だから八百屋
猪狩 ところで、その季節ごとの野菜の見分け方って、何かポイントがあるの?
川上 まあ、一般のスーパーなどで買う場合、いろいろあると思うんだけどね。簡単に言っちゃうと、よくスーパーで、特売とか安売りだとかあるけど、安いものは安いもので、やはりそれは目玉商品であって、その季節のものがたくさん取れるから、安い場合ってありますよね。だから、安いものを選んで買った方が得は得ですね。それと、「品物を見ていいな」と思うもの、納得できるものであればいいと思うんです。安いものが必ずしも悪いっていうんじゃなくて、季節に合ったものもので、たくさん取れたから安いんだってことですよ。もちろん、品質が良くないから安いっていうものもあるかもしれないけど、その辺はよく見ればわかる。見極めだけですね。あとね、例えばトマトとかを見て、「美味しそうだな」って思うものは、もう本能でしかないんですよね。美味しそうだなって思うものを買って食べてみたら「やっぱり美味しかった」だったり、「美味しくなかった」っていうこともあると思うんだけど、それは、ひとつの楽しみであっていいんじゃないですか。自分が選んだトマトは、見た目は悪かったけど、美味しかった...みたいな感覚で。楽しみながら選んでもいいんじゃないかな。
猪狩 だから八百屋やってるんだよな(笑)。
川上 そう(笑)。
猪狩 考えてみれば、普通の主婦より毎日野菜見て、選んでるんだもんな。
川上 そうだね。そういえば、毎日っていえば、今うちの店に毎日来るお客さんって、猪狩さんくらいしかいないんじゃないかなぁ。昔はねぇ、毎日来るお客さんっていうのが何人かいたんですけどね。
猪狩 この人が来るのはこの時間とか、この人が来たから何時だとかね。
川上 そうそう。だいたい来る時間帯も把握してましたね。だから僕は、毎日来てくれるお客さんが喜んでくれるように、何かしら探してくるようにしてます。市場の中に何か面白いものがころがってないかなぁって。
猪狩 だから、うちの冷蔵庫がいっぱいになっちゃうんだよ。
川上 毎日必ず何か一品は考えてますよ、猪狩さんのために。量があるものだと一般にも出すようにしていますが、量が少なかったり、1個しかないようなものだと、猪狩さん用にストックしておくじゃないですか。で、こういうの入ったからどう?使ってみて!とか、二人して店頭で話していると、他のお客さんが"何これ?"とか"どうやって食べるの?"ってことになって、"じゃあ、明日これとっといてよ"とかっていう広がりみたいなものがあるよね。
猪狩 そういった話は、生産者の方にもいくんだよね。
川上 そうですね。おかげさまで、どんなものが人気があるとか、伝わりやすいんですよ。
 
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料理人じゃなくて、研究者
川上 僕にとって猪 狩さんは、料理人っていうよりも研究者とかさぁ、医者みたいな感じ。僕が野菜っていう研究課題を出して、猪狩さんがそれをいかに美味しく料理するかみたいなね。僕がこれ使ってみてよ!っていった野菜を、まずは揚げてみるっていうでしょ。えっ?これ揚げるの?って思うようなものでも、やってみたら美味しかったとか。こうしたらもっと美味しいとか。
猪狩 これは使えないとかね(笑)。
川上 そう。それでも、言ってくれるからありがたいですよ。猪狩さん毎日来てるから、昨日のあれがよかったとか、毎日ふたりでいろんなディスカッションがあるよね。そうすると僕としては、今度違うお客さんに、こういうふうに料理した人がいたけど、美味しかったよ!ってアドバイスできるんですよ。
猪狩 毎日行ってるよなぁ。それはさぁ、うちの店の場合、毎日のように来てくれるお客さんが多いんだよね。1週間に1回とか。そういうお客さんに、毎回同じもの出してたら飽きられちゃうじゃない。だからいつも、何かないか?変わったものはないか?って。でも、変わったもの出したって、美味しくなかったら出したってしょうがないしね。そこなんだよ。問題はね。
川上 やっぱり、猪狩さんって、お店で実験してるような人だよね(笑)。それと、僕も同じなんだけど、基本的にはお客さんを喜ばせることしか考えてないんですよ。まあ、その人によって好みはあるんだけど。うちのお客さんは変わった人が多いんで(笑)、珍しいものや人が知らないような素材でも、こうしたら美味しかったとか、猪 狩さんに限らずいいろいろ教えてくれるんです。それどう見ても和食の素材だろうと思うもので洋食作ってみたとか。例えば虎杖をフランス料理に使うとかね。
あと、お客さん同士が集まって調理法の情報交換なんてこともうちの店先ではよくあるよね。
猪狩 そうそう。どうやって、使うの?とか、お互いに聞くんだよ。僕も知らないで終わっちゃうといけないから、ちゃんと聞かないとって思ってね。
川上 でも、昔の古い和食の料理人なんかは教えない人もいますよね。
猪狩 そういえば、僕も"教えないから自分で考えてみろ"って言われたことあるよ。それがちょっと悔しくってさぁ、やってみたら、結構簡単に出来ちゃったんだよね(笑)。
川上 やっぱり、研究者じゃないですか(笑)。
 
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*** お店データ ***
有限会社 豊吉
代表取締役社長 川上 浩さん
東京都中央区築地4-8-7
TEL03-3541-2688 FAX03-3541-8828
〜どんな野菜も大切に。みんなに喜んでもらえる野菜が提供したい〜
 実は僕、いやいや八百屋になったんです(笑)。芝居がやりたかったからね。これ本当ですよ。でも実際、親父がやってた店を継いで、毎日野菜を見てるとかわいいなぁ..って思いますね。それと、親父の実家が埼玉で農家をやってるんです。だから農家の方々の地味な仕事内容や苦労がわかっちゃうんですよ。台風が来れば、ハウスが飛んでっちゃって、せっかく作った野菜が全部だめになっちゃうこともあるし、あと農薬の問題なんかもいろいろ。もちろん農薬の使いすぎはだめ、でもある程度は使わないと野菜がだめになったり、虫が食ったりするし....本当は虫が食ってる野菜の方が美味しいんですけどね。そんなこともあって、小さいころから実際に野菜を作ってるところを見てきたんです。地味だけど、丹念に手間ひまかけて作られる野菜を。だから、どんな野菜でも大切にしてあげたいなぁ..って思いますね。うちの店の場合、取引してるのが季節料理の店が多いですから、季節の野菜、その品質の善し悪しは、八百屋として僕がどう見極められるか、自分の挑戦でしかないんだけど、農家の人にも、それを使うお店や、そのお店のお客さんにも喜んでもらえるような買い付けがしたいと思っていますね。
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