名古屋で代々、乾物店を営む店主から、日本の食卓へ一筆啓上。本物の美味しさを知っていただくために、少々苦言も申し上げますが、オヤジの話もいろいろ役に立つことがあるものです、ハイ。
 最近は、嬉しいことに、かつお節のニーズが高まってきている。少しずつ若い人たちも、買いに来てくれるようになった。美味しいものがあるとクチコミで知ったとか、あるいは子どもの健康を考えて、ときっかけはさまざまだ。
 いま、アトピーの子どもが実に多い。それで、アトピーの子どもを持つお母さんたちがうちの店にちょくちょく訪れるようになった。なぜか。医者にかかると必ず、生活のことを細かく質問されるらしいが、まずは食生活の悪さを指摘されるらしい。レトルトやインスタント食品が多すぎるということ。ダシもインスタントのものを使っているようだ。アトピーには特効薬なんてないから、そういった環境から変えていくしかない。
 それで、医者から「口にしていいもの」について指導を受けたお母さんがある日、うちへ来た。彼女は、ダシというものを使っておらず、ダシのとり方も知らないという。そういう人にいきなりダシのとり方を教えても無理なので、とりあえず添加物の入っていない「だしパック」を使うことを勧めた。それを買って帰られたが、しばらくして、また来店された。そのだしパックを使うようになったら、子どもさんとご主人に「今日の味噌汁はおいしいな」と言われたそうだ。子どもというのは非常に敏感だ。作っている本人はなかなか気づかないけれど、「最近、料理がうまくなった」とまで言われるようになり、奥さんは嬉しくなって、いろいろな料理に挑戦するようになった。そうなると、もっといいダシが欲しくなった。そういう段階になれば、ダシのとり方も教えやすい。最初の段階では、ダシのとり方自体がわからなかったのに、いろいろ挑戦しているうちに本物のダシを使いたくなったわけだ。そのうち、「本格的な和食を作りたいから、もっといいダシをください」ということになってくる。そんなふうに、子どものアトピーがきっかけで、「かつお節に目覚めた」人が実際にいる。
 健康食品とか自然食品と騒がれて、かつお節の消費量は一時期よりも間違いなく増えている。化学調味料はやめて、できるだけ本物を使おうという流れが確実にあるようだ。だからといって、薬みたいな値段をつけて売りたくはない。毎日使う調味料なのだから、少しでも安くして、お客さんには長く続けて使っていただきたいと思っている。
(おわり)
 

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