名古屋で代々、乾物店を営む店主から、日本の食卓へ一筆啓上。本物の美味しさを知っていただくために、少々苦言も申し上げますが、オヤジの話もいろいろ役に立つことがあるものです、ハイ。
 家内工業みたいに小規模で加工していた生産者も、生産能力を上げるために昔ほど手をかけなくなってきました。それが、私どもにうるさく文句を言われて取り組んでいるうちに、「確かに昔はこういう味がした」と思い出したのです。うちが特注しているかつお節を口にしたら、他のものとはまるっきり違うことがわかったようです。香りといい甘さといい、「なるほどなあ」と、やっと納得してくれました。だから最近は、私があれこれ言わなくても、彼らのほうである程度の状態にならないと「いいでしょ」とは言わなくなりました。こちらがうるさく注文をつけたことによって生産者は生産技術を上げ、忘れていた技術を思い出した。そして、うちはいいものが手に入るようになったわけだから、お互いにメデタシということです。
 いい商品をそろえるのは本当に大変です。生産者と共に取り組んで生産者を育てていかないと、自分の欲しいものを欲しいだけ買えません。なにしろ、産地入札でプレミアムがつくような人気荷主というのは、家族でまかなうとして、一日に100本のカツオを処理するのが精一杯。魚をおろして、煮て、骨抜きして、すり身して、冷ます。100本のカツオを一日かけて処理すると、次の日はもう何もできません。それくらいの生産能力なのです。「お金は出すからいいものが欲しい」と言ってもらえる人気荷主にでもなれれば、たとえ生産数量は少なくても食べていけます。しかし、いずれにせよ、品質にこだわるとなると大量生産は無理な世界なんですよね、かつお節というのは。
(・・・つづく)
●第8話は「美味しいツユを作るための仕掛け」についておおくりします。

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