名古屋で代々、乾物店を営む店主から、日本の食卓へ一筆啓上。本物の美味しさを知っていただくために、少々苦言も申し上げますが、オヤジの話もいろいろ役に立つことがあるものです、ハイ。
 こんなエピソードがあります。日本でも有数のかつお節の生産地である鹿児島県の枕崎の生産者に、初めて特注の本節作りを依頼した時のこと。一本釣りで、これくらいの大きさのカツオで、すり身はせず、カビ付けは3回、と頼みました。今は2番カビが主流で、天日干しについてもうるさく言いません。普通に干して、きれいに仕上がれば出荷するのが当たり前になっています。だから「おまえは難しいことを言うなあ」といきなり言われましたが、なんだかんだと言いながら、「とにかく一度やってみる」ということで話がまとまりました。
 8月だったか、ある程度できあがって「天日干ししているから見に来てくれ」と連絡があり、それで、うだるような暑さのなか、干しているところを見せてもらいました。うちのかつお節を手にとって、堅さをみるためにコンコンと叩いてみる。生産者は胸を張って「言われるとおりに作った。これでいいだろう」と自信満々。でも私にしてみれば「こんなのはできそこないだ。もっと澄みきったいい音がしなきゃだめだ」という代物。「いまどき、そんなかつお節は作らない!」「うちが頼んでるんだから作ってくれ!」と言い合った末、「じゃあ、とにかくやってみる」ということになり、私どもがOKを出すまで天日干しを繰り返してもらうことになりました。
 そういうことが2年・3年と続くうちに、生産者が「そういえば、昔はこういうかつお節を作っていた」と言いました。要するに、忘れていたわけなんですね。今の加工方法に慣れてしまって、昔ながらの作り方、かつお節の味を忘れていたのです。
(・・・つづく)
●第7話は「いい商品をそろえる苦労」についておおくりします。

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