自らを“無限責任社員”と称する野田氏が愛してやまない、蔵併設の直売店はまさにノダ・ワールド。そこは、訪れる人の五感を刺激し、彼の味噌づくりに対する考え方、職人たちへの愛情を心地よく伝えているギャラリーそのものです。
 この店に飾ってある絵は僕が描いたもので、ポスターなんかも、自分で写真を撮って文字を配置して作りました。最初は、デジタルカメラとパソコンを駆使し、デジタル系の画像処理をしてポスターを作ってましたが、それだと簡単にできてしまい、なんか虚しさを感じてしまったんです。よく考えてみると、そんなに速く簡単に絵ができること自体がおかしい。絵というのはこんな簡単に描けるものじゃない。自分たちの味噌だってそういうものだと気づいたんです。味噌は、できあがるまでに1年半かかります。それで、僕たち人間が触ることができるのは、そのうちのたった4日しかありません。あとの四百何十日間は僕たちの知らない世界です。僕らには関与できない、アンタッチャブルな世界。
 味噌蔵を見学に来た子どもたちに「味噌は何からできる?」と質問すると「大豆!」と答えてくれます。でも、味噌ができるまでの1年半というのは子どもたちには全然見えないわけで、大豆を持ってきたら明日には味噌になっている、と思っているんでしょうね。「それは間違っているよ」ということを説明する時に、自分がデジタルにハマっていてはいけないと感じました。
 アナログの世界、言ってみれば白いキャンバスの上に絵の具を重ねていくような姿勢が、モノを作っていく時の一つのステップではないだろうか。そういう世界が、たぶん、このギャラリーなんです。机だろうと椅子だろうと、床だろうと天井だろうと、色合い的にも感覚的にも味噌と一体化し、ここに溶け込んでいてほしい。デジタルなものは、ここには似つかわしくないんです。
(・・・つづく)
●第8話は「踏ん張って継続してみる」についておおくりします。
 

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