自分の子どもに食べさせたい豆腐をつくればいい。それに気づいて以来、コツコツと積み上げてきた“いしかわ流”の価値観を、21世紀「マインドの時代」にあるべき日本の農業から経営者像に至るまで、さまざまな観点から紐解きます。
 僕は、東京でサラリーマンをやっていたけれど、12年前に高浜へ帰り、豆腐屋の4代目を継いだ。当時は、両親と女房と僕とパートさん2人の、計6人でやっていた。だから、実質的には家族で営む小さな豆腐屋だった。その頃は、僕も若いから、たくさん売って、金を儲けて、ベンツに乗りたいな、と思っていた。若気のいたりというやつで、そんなサクセスストーリーを夢見ていた。当時は、家族だけでやっているから、なかなか休めないし、日曜日も仕事していた。それで、そのときは単純に、豆腐をたくさん作れば収入も増えて、休みもとれる、と考えた。バカみたいだけど、そう思った。
 では、たくさん作るにはどうしたらいいか。家族は4人しかいないけれど、機械を使えばたくさん作れると思った。そこで、機械を買った。ところが、どこのスーパーも買ってくれない。「 安かったら買ってもいいよ」と言われた。機械を入れたところで、4人でやっている店だから、たくさん作れない。1万丁の豆腐を作れるかと訊かれても、せいぜい100丁か200丁しかできない。それで、どうしたらいいのかなあと思っていた頃、子どもが生まれた。やはり親バカなのか、子どもに食べさせたい豆腐ってどんなかな、と考えるようになった。暇だったから、考えたり勉強する時間はたっぷりあった。
(・・・つづく)
●第12話は「豆腐は味がない、と言われる原因」についておおくりします。

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