つけもの講習会を通じて地域社会や子どもたちと接し、食文化継承のために日々奔走する“つけもの先生”。彼の食に対する哲学もまた、じっくり漬け込まれた、奥深い味わいが特長です。
 怖いなあと思うのは、いまの子どもたちには、まともな食体験がないということ。きちんとした食の体験がないから、その美味しさがわからない。ファーストフード店のハンバーガーばかり食べていると、それが一番美味しいものになってしまう。果たしてそれでいいのだろうか。
 フランスでは、三ツ星レストランのオーナーは年に一度、地元の学校へ「フランス料理とはこういうものだ」ということを教えに行くそうだ。そういうボランティアをやるそうだ。子どもたちの舌に覚えこませる。言い方は悪いけれど、将来のお客様をつくるために。だけど、そうでもしないと、食文化を残していくことは難しい。フライドポテト、つまりフレンチポテトは、もともとフランス料理だ。ところが、ファーストフード店のフライドポテトしか食べたことがない人は、本当のフライドポテトの味を知らないわけだ。本来のフライドポテトはこういう味だよ、これこそが本当のステーキだよ、ハンバーグとはこういうものだ、と経験させなければ、本物の味がわからないまま育ってしまうことになる。
 学校へ出入りしているうちに、私の顔も知られてきて、まちで会うと生徒たちが「社長!」とか声を掛けてくれるようになった。それで、知っている子がタバコを吸っていたりすると「こらっ」と注意できるような人間関係ができてきた。
(・・・つづく)
●第9話は「らしさの創造」についておおくりします。

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