つけもの講習会を通じて地域社会や子どもたちと接し、食文化継承のために日々奔走する“つけもの先生”。彼の食に対する哲学もまた、じっくり漬け込まれた、奥深い味わいが特長です。
 うちは、美味しく漬けるノウハウはしっかり持っている、と自負している。いろいろな問い合わせの電話があって、なかにはお礼ということで、採れた野菜を送ってくれる人もいる。そういうやり取りをしているうちに、うちのファンになってくれる。そういう人の口コミは影響が大きい。だから、今ぐらいの規模で会社をやっているのは面白みがある。
 ただ、漬物屋だからといって、漬物しか扱わないのではなく、いろいろなことに取り組みたいと思っている。例えば、地域特産品の開発。南設楽郡の鳳来町では梅が採れるので、そこで梅うどんを開発し、表彰された。地元ではなかなか評判がいいらしい。他にも、キクイモの味噌漬け、メロンの醤油漬けや粕漬けも開発した。
 あるいは「これ、漬物にならんか」と、持ち込まれてくることがある。クオリティのいいものを洗練されたかたちで提供することが必要な時代だ。より現代に合った、新たな提案をしていかなければならない。それができるのは、やはり「人」。自分にしかできないワールドができると、そこで初めて自分のことがよくわかってくる。人と競うなかでは見えてこない。競うことも大切だけど、もっと離れて、冷静に自分を見ることが大切だ。何が求められているのか、何が大切なのか。仲間たちと飲み食いしながら「パッケージはこうした方がいいよ」などの意見を聞く。漬物講習会で出される意見を吸い上げて、商品を作ってみる。だから、30年、40年経ってもこの仕事はつながっているのかな、と思う。
(・・・つづく)
●第12話は「長く続ける、三方良し、そして楽しく」についておおくりします。

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