つけもの講習会を通じて地域社会や子どもたちと接し、食文化継承のために日々奔走する“つけもの先生”。彼の食に対する哲学もまた、じっくり漬け込まれた、奥深い味わいが特長です。
 当社は昭和19年に創業、37年から「漬物の素」の製造卸業を営んでいる。戦後の食糧難の時代、人々の食生活を豊かにする目的で先代社長が「宏昌(こうしょう)食糧研究所」を始めた。農協ができる以前、農家の生活は非常に厳しく、そのなかで特に女性の食に対する意識向上を図ろうと、農協の婦人部(現在の女性部)草創の頃に活動を開始。活動の一環として、いまで言うレシピ本を作り、庭先で麹や味噌の作り方などを教えたそうだ。要するに、単なる物売りではなく、食用菌を使って加工品を作り、食生活を豊かにしよう、ということだった。
 昭和30年代中頃から高度経済成長期に入り、女性が外で働く機会が増え、家で粕を作って野菜を漬けることも少なくなってきた。そこで、家で漬物をする状況を整えようと、現在のような生業になった。ただ、創業当時の理念や考え方はいまも一貫しており、商品をつくるだけではなく、原料の選定の仕方・使い方・食べ方までをトータル的に教える「つけもの講習会」なども実施している。愛知・静岡そして岐阜や長野の一部でも開催し、現在、年間12,000人が参加している。講習会では、「食生活指針」(文部科学省・厚生労働省・農林水産省)に沿って「食とは何か」というところから話を始めるようにしている。なんでもそうだが、基礎とか基本が一番大切。だから、漬ける原理とかも話す。なんでも簡単に手に入る世の中ゆえに、いまの人たちには肝心な基のことがわかっていないようなので。
 ということで、私も漬物を通じて「食とは何か」をみなさんに考えていただきたいと思い、地道に取り組んでいる。(・・・つづく)
●第2話は「地域に合った食文化」についておおくりします。

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